たびのはなし

女1人で世界一周×3したわたしが旅に関するエッセイ・予備知識を得るための本・旅行記などを勝手に紹介

手紙の行方

90年代が青春真っ只中だった人たちには「山口智子」というと、THEサバサバした女の代名詞というか、そういった女性がいてもいいんだと教えてくれた女優さんであると思う。少なくとも私はそう思う。

90年代はアイドルの時代ではなかった。小室サウンドが常にヒットチャートを独占し、かっこ良く歌って踊れるのが正義の時代。山口智子は1996年に放映された「ロングバケーション」ではキムタクの相手役として本当にかっこいい女性を演じてくれた。

 

ドラマから遠ざかり、自分で旅の企画書を書いて旅番組をやっていたなんて知らなかった。この本はその番組でチリを旅するためのロケハンとして、一人旅した際の旅行記である。

 

車を借りてチリを縦断する(途中に飛行機は入るけど)。北から始まり、南はパタゴニアと呼ばれるエリアまで、アルゼンチンも少し行きつつ、最南端であるプエルトウィリアムスまで行っている。

個人的にはパタゴニアは本当におすすめだから、この本に載っている写真を見るだけでも楽しかった。氷河が多く見られる地域で、氷河に魅せられて何度でも見たくなったという話が書いてあり、私も本当にその気持ちを味わったなと思う。そのくらい見たことのない青と、壮大さなのである。

 

チリは南米の中でも一番安全だと言われている国。北の砂漠から南の氷河まで本当に観光資源は多く持っている国だと思う。それを余すことなく見て回り、時折出てくる人々の描写や、食べ物の描写にはその国を思い出させる文章のセンスがあると思った。

女優さんだからなのかとてもおしゃれな文章が多く、読みにくさもあるが、これはこの著者だからこそ許されることであると思う。

 

ただし女優さんだからこそなのだろうが、予算感が全くわからないのがこの本の残念なところ。一人で行っている感じはするけど、コミュニケーションはどうやって取っているのだろうか。英語が話せても本に出てくるほどのコミュニケーションは取れないと思うから、通訳を雇っていたとは思う。車もたまにドライバーを雇っている時があるようだ。そうなってくると、普通の人が旅行に行く際には、やはり参考にはならない。

 

冬の夜、少し眠くなる前に暖かいところでゆっくり読むような柔らかい旅行記。チリの良さはとても分かる。マイナーな国だからこそ、著者に惹かれて読んでみてもいいかもしれない。

 

<まとめ>

・チリの雰囲気がよくわかる

・写真が多くて良い。ご本人のイラストやスクラップブックもおしゃれ

・予算感が全くわからない