スーツケースのティータイム
残念ながら2019年1月5日に亡くなった旅行ジャーナリスト兼高かおるさんの著書。
発売は昭和60年となっており、その25年前に世界一周旅行に番組としてではあるが出かけた。その世界一周旅行や、それ以外の取材の旅について振り返りながらインタビュー形式で話が進められていく。
この本は世界の歴史、世界の本に載らないような人々の生活の歴史を知る上で本当に良い本だった。
旅行のノウハウという意味では時代も違いすぎるし参考にはならないが、「古き良き時代」というものが本当にあったんだなと実感する。
当時存命だったダリへのインタビューや、まだダイアナ妃と出会ってもいないチャールズ皇太子の気さくな一面。そういった著名人との触れ合いも、当時だから許されたインタビューであると思う。
また、時代はこうも変わるものかと、今と比べて目からウロコな事実や、逆に考え方としては今と変わらない、ハッとさせられる部分も多々ある。
日本人にとって海外旅行が当たり前ではなかった時代、一流と呼ばれる人(言葉も堪能、お金もあるが品がある)たちだけが海外に行けていた時代と、そこから25年後の景気が良くなりお金だけがあるが品が悪い人たちが海外に出かけるようになって、日本人はマナーが悪いからホテルに宿泊禁止のところもあったとか。
これ、近年では中国に対して行われていること(それが原因で現代では人権問題に発展するが)である。一度経済が発展し、人々が外に出られるようになると、必ず通る道なのかもしれない。
逆に変わらないという点で言えば、当時から兼高さんは、「日本は島国だから自分たちの世界での見られ方を知らないため、自分たちの文化に自意識過剰気味になっているのではないか」と言っている。
これは今でも変わりがないことだと思う。日本万歳番組はなくならないし、今でも世界の需要を知らないまま日本製が売れていると勘違いしている人たちもかなり多い。
サブタイトルにある「旅ほど素敵な人生はない」と名付けられている通り、兼高さんは旅を愛し、世界の人々を愛し、自分の意見を持ってたくさんの文化に触れてきたんだということが分かる。
たくさんのエピソードが全て微笑ましく、軽快な会話形式だから読みやすく、誰にでも読んでみてほしい一冊だと思った。
残念なのはもう古本でもなかなか売っておらず、高額になっていること。図書館でも倉庫から出してもらった借りることがができた。
<まとめ>
・インタビュー形式で嫌味なく会話が続きとても読みやすい
・約50年前の世界がどうだったのか一般の人のレベルで分かりやすく書かれている